『保存額装』って、なんだろう?
初めて耳にする方も多いかもしれませんが、
簡潔にいうと、額の中を美術館仕様のようにする額装方法のことです。
想い出のお作品や、価値ある大切なお作品を、より良い状態で保ちながら、
長い間鑑賞を楽しめる額装方法のことで、ブリザベーション・フレーミングとも言います。
「あれ? 額の中って、作品にとって良い状態じゃないの?」と、
思われたかもしれませんが…
実は、額の中は、お作品にとって最適とは言えない場合があります。
以下のこと等により、お作品を額の中に入れていても、酸性化等の劣化を招いてしまい、色あせやカビやシミ等を生じさせてしまいます。
・紫外線:お部屋の中にも、「紫外線」は降り注いでいます。
・アク:木材の20~30%にもなるリグニンは、木製の額(枠)や裏板から「アク」として発生します。
・悪性ガス:大気中の「悪性ガス」は、額の中にも存在します。
・湿度:日本の梅雨や、気密性の高い住宅により、湿度60%以上になると、カビが発生しやすくなります。
・空気の停滞:気流がなく「空気が停滞」することで、カビを発生しやすくなります。
通常の額装でも、良質のパルプを使用した中性のマットを使用した額装は、お作品の劣化を遅らせることが期待できます。
また、マットが作り出す数ミリの空間も同様です。
アルミの額は、悪性物質を生じることはありません。
保存額装を施すことにより、額縁の中はお作品にとって最適に近い環境となり、
紫外線や大気中の悪性ガス、酸性物質、湿度や乾燥などから、お作品を護ります。
以下に保存額装に使われる部材を、ご紹介いたします。
□UVカットアクリル
①ミュージアムアクリル(3mm厚)
世界の有名美術館で採用されている99%UVカットのアクリルです。
色かぶりや映り込みをほぼしないため、まるで作品を直接見ている様に見えます。
表面にある程度の強度があり傷つきにくく、また静電気をおびにくいです。
但し、お値段はかなり高価になります。
②低反射アクリル(2mm厚)
99%UVカットのアクリルです。反射を抑え、傷つきにくいです。
帯電防止加工が施されています。
③通常UVカットアクリル
上記のアクリル程の品質ではありませんが、より安価でUVカットが出来ます。
(上記の画像に載せてあるものです。)
□悪性ガス吸着ボード(マット又は、作品の後ろに入れるボードとして)※PAT合格
・100%コットンラグを原料として、悪性ガスを吸着します。
・1ply(約0.35mm厚)、2ply(約0.7mm厚)、4ply(約1.4mm厚)、8ply(約2.8mm厚)を
組み合わせることが出来ます。厚い方がより効果が高いです。
□作品固定部材
・作品に直接テープを貼ることなく、マット又は台紙に作品を固定することが出来ます。
・保存品質の透明ポリエステルと、裏面に接着剤の付いた無酸紙から作られています。
(これの画像はありません)
□バリアテープ(額の内側に貼ります)
・木製の額縁から発生する酸性物質が、額内の作品に悪影響を及ぼすことを防ぎます。
・バリア効果のあるアルミニウムと弱アルカリ性の紙で作られたテープです。
□軽量アルカリ緩衝ボード ※PAT合格
・無酸でリグニンを含まないアルカリ緩衝剤でpH7.5~9.5に調整されています。
・約2mm厚、約2.5mm厚、約5mm厚の3種類を組み合わせることが出来ます。厚い方がより効果が高いです。
□調湿ガードボード
・作品の裏面からの有害物質の浸透を防ぎます。
・多湿の場合は吸湿し、乾燥の場合は放湿して、額縁内の湿度を調整します。
・約3.8mm厚、約5mm厚の2種類があります。
□保護シート ※PAT合格
・裏板から発生する有害物質(酸化物質など)を防ぎ、また作品を湿気から護り、作品の安全性を高めます。
上記の「軽量3層バックボード 」を使用する場合には、使わなくともよい場合もあります。
□軽量3層バックボード(3.5mm厚)
・額縁の裏側からの埃や虫の侵入を防ぎ、額縁に強度を与えます。
・リサイクル性に優れ、燃やしても有害ガス(ダイオキシン、塩化水素など)を発生しません。
・軽くて丈夫な3層構造のボードです。
□緩衝フェルトパッド(直径9.5mmの円形のフェルトで、額の裏側下部に貼ります)
・額縁と壁の間にわずかな空間を生じさせ気流を生み、カビの発生を防ぎます。
・額縁が壁から離れるため埃がたまりません。
(これの画像はありません)
永久的なものではないです(飾る場所の環境の影響を受けます)が、長く作品の質をたもつことが可能です。
いろいろな素材がありますので、ご不明点やご質問等ございましたら、お気兼ねなくご連絡下さい。